『風景によせて2021 はらいずみ もやい』 プロセス便

ソノノチでは、「ランドスケープ・シアター(風景演劇)」の創作プロセスを作品化したり、アーカイブを多角的に体験できるような取り組みを行なっています。

その1つとして、風景での上演に向けて、滞在制作をした静岡県掛川市北部の原泉地区での創作プロセスを記録した映像や上演の映像、そして創作に関しての文書をセットにした「プロセス便」を作成しました。

『風景によせて2021 はらいずみ もやい』ができるまでの様子を、原泉での稽古や暮らしに密着撮影した創作過程のドキュメンタリー映像と、実際の本番の上演映像、プロセス便でしか読むことのできない購入者限定の特典文書をセットにしてお届けします。

お求めは、「ソノノチオンラインショップ」にて

『風景によせて2021 はらいずみ もやい』 プロセス便

セット内容は下記の通りです。映像作品や対談記事は、単独購入もできます。

①上演映像
『風景によせて2021 はらいずみ もやい』

本番の記録映像です。現地の風を感じながらご覧ください。(約32分)

②滞在制作プロセス映像
『風景によせて2021 はらいずみ もやい』ができるまで

制作中の様子に密着した映像作品。メンバーへのインタビューも交えながら、ソノノチの創作プロセスをご覧いただけます。(約1時間38分)

③滞在制作を振り返るコラム
「シャボン玉のシーンで、なぜ風は吹いたか」(中谷和代)

構成・演出の中谷和代によるプロセス便の購入者限定のコラムです。

④小山田徹氏とクリエイションメンバーの対談記事
「枠組みを捨てよ、外へ出よう」

小山田徹さん(美術家、京都市立芸術大学彫刻専攻教授)と中谷和代らクリエイションメンバーとの対談記録です。
小山田徹さんには、上演場所の原泉までお越しいただき、実際に作品をご覧いただきました。クリエイションメンバーとの対談では、ヒエラルキーのない創作環境についてや、滞在制作の魅力についてお話しました。

⑤森山直人氏(演劇批評家)による劇評
「風景」と「観客」について

⑥上演パンフレット

⑦「風景便」より
サウンドスケッチ(music by Sceno Ichiro)

《アーカイブのご購入》

プロセス便 セット購入はこちら

映像や読み物の単独購入はこちら

ソノノチのストアーズでは、様々な手作りグッズや公演グッズを販売していますのでぜひご覧ください!


「風景によせて」特設サイトはこちら
http://landscape.sononochi2.sononochi.com

【寄稿】『風景によせて2021 はらいずみ もやい』評/文:森山直人

演劇批評家の森山直人さんに、『風景によせて2021 はらいずみ もやい』の劇評を寄稿いただきました。
下記、寄稿文です。

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「風景」と「観客」について

――ソノノチ『風景によせて2021 はらいずみ もやい』評

(photo:Wakita Tomo)

 

「風景演劇」シリーズを制作しつづけているパフォーミング・アート グループ「ソノノチ」の新作を、静岡県掛川市原泉(はらいずみ)地区で見た。初めて訪れる場所である。新幹線に乗り、掛川駅で降り、初めて乗るバスを駅前で待っているあたりから、すでに私は、半分「観客」であった。
同じような感覚を抱いたことは、いまは解散してしまった劇団維新派の公演で体験したことがある。たとえば、岡山県犬島で上演された作品を見に、電車を乗り継ぎ、フェリーに揺られる頃には――つまり、劇場の客席に座るはるか以前から、私はもう「観客」であったのだ。島に上陸すると、そこには恒例の屋台村と、丸太で組んだ巨大な劇場があった。あたかも、「劇場」そのものが船となって、船のように、その場所に運ばれてきたかのようであった。
それに比べると、ソノノチの「風景演劇」は、少し違う体験だった。
たしかにバスに揺られる頃、私はフェリーで犬島に運ばれていた時と同じように「観客」に変貌しつつあった。だが、いざ、現地についてみると、大きく違う。
そこには、「劇場」はない。ただ、ごく普通の「風景」だけが、圧倒的にそこにあるのだ。

原泉地区は、掛川駅からバスで約30分の山間部にある。山間の、やや開けた集落の農地跡で、1時間に満たないこの上演は行われた。簡素な椅子などが置かれているだけで、目の前には山々が、傍らには河原が、そして何よりも、その土地に住んでいる人たちの暮らしが、おだやかに私たちを取り囲んでいる。やがて、遠くの道路の向こうから、あるいは近くの古民家の方角から、3人のパフォーマーが、ゆっくりした足取りで、「舞台」へとやってくる。3人は、ほとんど交わることなく、おのおのに固有の時間を、そのような風景とともにすごし、たたずんでいる。白と赤の、やや神職を思わせないでもない衣装がなければ、3人の振る舞いは、ほとんど風景に溶け込んで「見えなくなって」しまうだろう。
演出の中谷和代は、あたかも白いキャンバスに風景画を描くように、風景のなかに俳優たちを存在させる。俳優たちのゆるやかな、意味性の希薄な動きや軌跡は、ちょうどキャンバスに風景画を描くときの自由な絵筆の、その筆先の動きをも連想させる。実際、「舞台」――といっても、そこは何もない農地のような場所――の片隅には、現実の風景を描いた風景画がイーゼルに飾られている。いつ始まってもよく、どこで終わってもよい時間が、風のように、その場に漂って消えていく。客席の多くは、地元に住む人々で占められていたように見えた。

この「出会い」を、私たちは何と名付ければよいのだろうか。
そのことを考える上で、この作品が、「HARAIZUMI ART DAYS!2021――相互作用」(10月14日-11月28日)の参加作品であることは重要である。グラフィックデザイナーの羽鳥祐子が中心となって立ち上げたこのイベントは、いわゆる国際アートフェスティバルとは一線を画し、何よりもアーティストがこの場にレジデンスして創作のプロセスを構築することを第一の目的に掲げているところに特徴がある。たとえば、越後妻有や瀬戸内のように、国内外の観客が多数訪れることで、地元の風景が祝祭的に変貌するようなフェスティバルではそもそもないのだ。だからこそ、風景は、そこに暮らしている住民の暮らしをそのままたたえつつ、当たり前のように、そこにある。その当たり前さこそが、圧倒的な何かでもある。
だからこそ、本作との出会いは、私にとって、きわめて珍しい体験であった。掛川駅からバスに乗ったとき、たしかに私は、維新派の野外劇場を訪れたときと同じように、「(劇場の)観客」へと変容しかけていた。だが、いざ現地に到着し、周囲を散策し、作品を体験しおえた頃には、「私は観客である」という意識は、すでにほぼ消滅していたのである。
だとすれば、ここにいる私は、いったい何者なのか。――おそらく私は観客ではなく、私自身が風景の一部と化していたのではなかったのか。風景に、はたして観客は存在しうるのか。さらにいえば、「風景演劇」に、はたして「演劇」は存在しうるのか。
たぶん、その是非はひとまずおき、そこに演劇など「ほとんど存在していなかった」のだ、と考えるべきなのだと、私は思う。ただ、風が通り過ぎた。その風を、私たちはほとんど演劇と呼ぶ必要はない。それでも一瞬、「演劇のようなもの」が通り過ぎたようにも思える。いまの私にとって、確実にいえることは、2020年に京都芸術センターという屋内劇場で見たソノノチの「風景演劇」シリーズの第一作(『たちまちの流(ながれ)』)とは、まったく違う質の体験があった、ということである。風景のなかで、もはや、ほとんど「気配」のようなものへと接近しつつある何かを「演劇」と呼べるのかどうか。そこにあったのは、ほぼそんな「問い」であったように思われる。

森山直人(演劇批評家)

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演目:ソノノチ『風景によせて2021 はらいずみ もやい』

日程:2021年11月20日-21日

場所:泉公会堂付近(静岡県掛川市黒俣62周辺)

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《終演御礼》『風景によせて2021 はらいずみ もやい』

ソノノチ『風景によせて2021 はらいずみ もやい』(「HARAIZUMI ART DAYS!2021 ~相互作用~」にて上演)
2021年11月20日(土)、21日(日)の全4ステージ。
おかげさまを持ちまして、静岡県原泉地区での『風景によせて2021 はらいずみ もやい』
お天気にも恵まれ無事に上演を終えました。

風景の中に、人や木、鳥や虫など色んな固有の時間の流れを持つものが、同じ場所に偶然いること。それが大きい一つのフィールドの「枠」の中にあること。
それぞれの存在が偶然そこにある重なりを感じながらの上演となりました。

ご覧頂いた皆さま、気にかけて頂いた皆さま、この場所での上演を受け入れて下さった地域の皆さま、そして原泉アートプロジェクトに関わる、全ての皆さまに感謝します。

ソノノチは次につづきます。

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上演のことだけでなく、プロジェクトの概要や創作のフローなどを集約した開催レポートを作成しました。
作品をご覧いただいた方もそうでない方も、作品の軌跡としてぜひお読み頂けますと幸いです。

『風景によせて2021 はらいずみ もやい』報告書はこちら(6.8MB)からダウンロードできます。
※無断での編集・転載はご遠慮ください。

 

アーカイブの作品化の取り組みについてはこちらもご覧ください。

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《上演の様子》





(撮影:脇田友)

ソノノチ上演情報/風景演劇プロジェクト 『風景によせて2021 はらいずみ もやい』(「HARAIZUMI ART DAYS! 2021」参加作品)

ソノノチの《風景演劇》最新作です。

昨年に引き続き、原泉の風景をモチーフに、眺めるように鑑賞するパフォーマンス作品を上演します。
この瞬間に居合わせた私たちが「広場」という仕掛けの中で、大地に息づく様々な記憶を照会するためのプロセスです。

「原泉アートデイズ!」での上演に向けて、現地での滞在制作をしながら創作を進めています。  



ソノノチ 風景演劇プロジェクト

『風景によせて2021 はらいずみ もやい』

(「HARAIZUMI ART DAYS! 2021 ~相互作用~」内で上演)

 
目で見て、耳をかたむけ、ことばをさがして。
その場から移動したり物を置いたり、寝転んだっていい。

あなただけの眺めをさがしに。もっとうれしい胸騒ぎがする方へ。
 
旅するパフォーマンスカンパニー、ソノノチが取り組む3年目の滞在制作。
大地をもやい、観る人ごとに異なるフレームを映し出す「風景演劇プロジェクト」最新作。
 

 

●上演日時
2021年 11月20日(土)、21日(日)
各日 ①11:45-/②15:30- 開演〔小雨決行、荒天中止〕
※上演時間は約30分間です。
※開始10分前までにご来場いただくことをお勧めします。

●場所
泉公会堂付近(静岡県掛川市黒俣62周辺)
※鑑賞場所は、受付にてご確認ください

●観覧料
自由(ドネーション)

●メンバー

構成・演出:中谷和代

俳優:藤原美保、芦谷康介(サファリ・P)、岡田眞太郎(劇団トム論)
音楽・演奏:瀬乃一郎(廃墟文藝部)
絵画制作:森岡りえ子
美術:下寺孝典(TAIYA)、藏園悠介

演出部:neco(劇団三毛猫座)/衣装:たかつかな(何色何番)/テクニカル:脇田友(スピカ)/宣伝美術:ほっかいゆ r ゐこ/アーカイブ:柴田惇朗、中谷利明/制作部:渡邉裕史、小寺春翔、藤田みのり

*プロセス便、予約販売中

その日その場所でしか観ることのできない風景での上演。
それがつくられる前後のプロセス(滞在制作の記録や上演の映像など)を後日お届けします。
お求めはこちらから

主催:ソノノチ、原泉アートプロジェクト
協力:一般社団法人フリンジシアターアソシエーション、日向花愛、RiCO、いろはにクリエイト
 
Supported by KAIKA 芸術文化振興基金助成事業

 

 
《ご鑑賞にあたってのお願い》
ご来場時は、マスクの着用・手指消毒・検温・社会的距離の確保にご協力をお願いいたします。
発熱やのどの痛み、倦怠感など、体調のすぐれない方は、ご来場をお控えください。
期間中、観覧者の不注意等による、移動中や会場内での事故等については、一切の責任を負いかねます。荒天時や感染拡大の状況などの理由により、パフォーマンスの中止や変更をする可能性があります。当日10時までに上演の有無を決定いたします。開催中止の場合は、ソノノチSNSでお知らせします。
 

「HARAIZUMI ART DAYS! 2021 ~相互作用~」開催概要
【開催時期】 2021年 10月 14日(木)〜 11月 28日(日) ※月・火・水 休業
【時  間】 10:00〜 16:00
【会  場】静岡県掛川市原泉地区全域
【受  付】当日受付。事前申込不要。必ず、受付へお立ち寄りください。
旧原泉第2製茶工場(静岡県掛川市萩間 702)
旧田中屋(静岡県掛川市黒俣 545-1)
【観 覧 料】自由(ドネーション)
【内  容】
国内外様々なジャンルの現代アーティストたちが、原泉でのアーティスト・イン・レジデンスを通して制作した作品の数々を、期間中、地域の様々な場所で鑑賞できます。
展示の他にも、アートストアやワークショップ、パフォーマンスなど、複合的にア ートを楽しめます。

<参加アーティスト>
中瀬千恵子( Japan/絵画)、野々上聡人( Japan/造形)、ソノノチ( Japan/演劇・パフォーマンス)、
近藤愛子( Japan/インスタレーション)、安藝悟( Japan/音読・パフォーマンス)、
Robin Owings( USA/インスタレーション)、都築透( Japan/映像)、 omedarida( Japan/造形)、
井口貴夫( Japan/絵画・造形)、みなみりょうへい( Japan/インスタレーション)
弓塲勇作( Japan/絵画)、松島家( Japan/パフォーマンス)

アクセス
【自家用車】
* JR掛川駅から約 20分
*新東名高速道路 森掛川 ICから約 15分
【バ  ス】
*掛川市営バスで掛川駅北口にて、「泉」行き乗車、約 30分。
 ①旧掛川市 JA原泉支所行き →「丹間」下車徒歩 2分
 ②旧田中屋行き       →「泉」下車徒歩 0分

【主催】原泉アートプロジェクト 
【支援】アーツカウンシルしずおか
【協力】原泉地区まちづくり協議会、資生堂企業資料館、資生堂アートハウス、さくら咲く学校、農事組 合法人 原泉茶業組合、オルタナティブスクール実りの泉、funnyfarm、GAMA coffee
【協賛】しばちゃんランチマーケット、掛川市森林組合、有限会社 佐藤工務店、ならここの里、近藤⻭科クリニック、ダイアテック株式会社、POWA POWA


【お問合せ】
ソノノチ
電話:050-5318-7717(制作)
メール:info@sononochi2.sononochi.com
WEB: 「風景によせて」特設サイト http://landscape.sononochi2.sononochi.com
原泉アートデイズ https://haraizumiart.com

★速報記事はこちら

ソノノチ上演情報/「原泉アートデイズ!2021」で作品を発表します

ソノノチ上演情報/「原泉アートデイズ!2021」で作品を発表します

「HARAIZUMI ART DAYS! 2021」


3年連続でこの現代アート展の参加アーティストの1組として関わらせていただくことになりました!

原泉は、ソノノチの第二創作拠点となってきています。
滞在制作を通じて、生活と創作のサステナビリティをこの場所で追求していきます。

今年のテーマは「相互作用」。

イベントの詳細については、「原泉アートプロジェクト」のWEBサイトでご覧ください。
http://haraizumiart.com

\クリエイションメンバーのお知らせ/

原泉でのクリエイションメンバーのお知らせです。

このメンバーと原泉で滞在制作をして新作をつくり、「HARAIZUMI ART DAYS! 2021」で発表します!

ソノノチの上演日程は、2021年11月20日(土)・21日(日)を予定しています。

構成・演出:中谷和代

クリエイションメンバー:芦谷康介(サファリ・P)、岡田眞太郎(劇団トム論)、藏園悠介、下寺孝典(TAIYA)、瀬乃一郎(廃墟文藝部)、たかつかな(何色何番)、中谷利明、neco(劇団三毛猫座)、藤原美保、ほっかいゆ r ゐこ、森岡りえ子、脇田友(スピカ)、渡邉裕史

サポートメンバー:柴田惇朗、小寺春翔、日向花愛(スピカ)

【HARAIZUMI ART DAYS! 2021】

■日程:
2021年10月14日(木)〜11月28日(日)10:00-16:00 (月、火、水 休業)

■参加アーティスト(順不同):
中瀬千恵子、野々上聡人、ソノノチ、近藤愛子、安藝悟、Robin Owings、都築透、omedarida、井口貴夫、みなみりょうへい、弓塲勇作 他

■メインビジュアル:
Robin Owings『澄んだ流れ』(HARAIZUMI ART DAYS! 2020より)